Vol.29 私の母はモダンガールだった!?(その4)

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院長コラム

Vol.29 私の母はモダンガールだった!?(その4)

(前の記事の続き)戦前のモダンガールだった母親も85歳になりますが、この10年間で脊柱管狭窄症の手術を2回、膝人工関節置換術、大腸がん手術、脳梗塞など手術や入院の繰り返しでまさに満身創痍です。高齢になってから全身麻酔の手術を4回も受けてよく頑張ったものだと感心しています。

手術の朝ストレッチャー(移動ベッド)で運ばれて行く母の手を握りながら、私と姉は祈るような気持ちで見送ったものです。私もかつては岐大病院で長年研究と臨床生活を送り、沢山の患者さんのドラマ以上にドラマチックな場面を多く見て来ましたが、自分の家族のこととなると日頃はなおざりにしている神様や仏様にすがってしまうのだから我ながら身勝手なものです。中でも母が78歳で受けた手術は腰椎3椎体をチタン製のプレートとスクリューで固定する手術で7時間にも及ぶ大手術でした。患者の家族として手術が終わるのを待つのは本当に長いもので、無事終了して岐大整形外科の清水教授から丁寧な説明と「予定通り大変にいい結果です」との言葉に心から安堵したものです。3年後の大腸がんの時には、さすがに家族一同覚悟をしましたが、私の岐大医学部の先輩で腫瘍外科助教授の杉山先生に執刀して頂き、幸い転移もなく経過も良好です。

最初の手術の後、母は朝夕1時間ほど仏前でお経を唱えて写経を毎日欠かさずに続けて来ましたが、何と入院中も病室で休まずに読経と写経を続けるため主治医や看護師さんたちから大いに驚かれ感心されました。その間に写経は千巻二千巻と増え続け、ついに京都妙心寺から全国初の女性ということで表彰して頂きました。現在も三千巻を越えて記録を更新中です。写経とともに母が打ち込んでいるのが千代紙細工です。最初は脳梗塞のリハビリのつもりでしたが、勉強して工夫するうちに上達して色々な会合に招かれて講習するまでになってしまいました。こうなると本人も益々やる気が出て、立体の花や金魚の飾り物や宝石箱から始まって、仏壇に置くマッチ箱はまるで芸術品!?で、色々な方に進呈して大変喜ばれています。(当院の患者様でご希望があれば差し上げます。)

母は様々な病魔にもめげずに、お世話になった人々に感謝していますが、私自身はこうして不肖の息子や家族が皆元気でいられるのも、母が一人で病気の苦しみを一手に引き受けてくれているからだと考えています。

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