今回の患者さんは37歳の女性で10年ほど前に他院で豊胸術を受けられましたが、残念ながら理想通りにはならなかったとのことで来院されました。カウンセリングルームには沈んだ表情の女性がお子さんと一緒に待っておられました。何か事情がありそうです。こんな時私は徹底的に時間をかけて詳しくお話を聞くことにしていますが、この方はゆうに1時間を超えました。
この女性は離婚後5年たってやっとお付き合い出来る男性と巡り合えたそうですが、「今の自分の不自然な胸を見られる時が来るのが恐怖です。本当にキレイで自然な胸になるのでしょうか」と不安そうに訴えられました。診察してみるとこの方の豊胸術は生理食塩水バッグを大胸筋下に入れる方法で、以前わが国では一般的に行なわれていた方法です。手技が比較的簡単なため短時間で終わりましたが、大胸筋下を広範囲に剥離するために術後の痛みが強く、3ヶ月間の痛みを伴うマッサージが大変でした。もちろんある程度良好な結果も得られましたが、筋肉の下にバッグを入れるため固く張った感触になることと胸や腕に力を入れるとバッグが圧迫されて不自然に変形するなどの欠点も多くありました。
この方はマッサージの過程でスペースが狭くなってバッグが上に上がってしまったため、バストの上部が膨らんで元々の乳腺部分が下がって垂れた状態になっていました。感触も非常に固くて最悪です。この外見と感触ではこの女性が悩まれるのも無理はありません。
今回の悩める37歳の女性は、10数年前に入れた生理食塩水バッグを取り出して代わりに乳腺下に最新のコヒーシブシリコンバッグを入れることにしました。美容医療に携わっていていつも感じるのは、女性のバストに対する切実な思いと強いこだわりです。女性が豊胸術の結果に求めるのは、豊かで美しい外観はもちろん、柔らかな感触や自然に流れる動きなど非常に繊細です。特にこの女性は再婚を機に手術を決心されたようで、相手の男性のためにも私の責任は重大です。カウンセリング時の「今の自分の不自然な胸を見られるのが恐怖です。キレイで自然な胸になるのでしょうか」という不安そうな言葉が私の脳裏に残りました。
手術は新しい傷を増やさないように前回と同じ腋の下を3~4cm切開し、大胸筋と乳腺の間を丁寧に剥離して新しいスペースを作成した後、大胸筋下の生理食塩水バッグを取り出しましたが、再手術のため側胸部の癒着が強く剥離は中々大変です。その後に大きさが自由に変えられるテストバッグを挿入し、患者さんに実際に見て頂きながら新しいバッグの大きさを決めて行きます。取り出したバッグの大きさは175ccでしたが、一回り大きくしたいという患者さんの希望で新しいバッグはスーパーアナトミカル型コヒーシブシリコン250gに決定しました。実際にバッグが入ったバストを見た時の患者さんの喜びと安堵の混じった表情は今でも忘れられませんね。
入れ替えの分だけ腫れは少々長かったものの術後の経過は大変に良好で、1ヶ月後検診の時には見違えるような素敵なバストになっていて私も一安心しました。当院ではバスト術後患者さんに年1回の超音波検査をお勧めしていますが、1年後に来られた時に男性の方が同伴されていたので、「めでたくご結婚されましたか?」と尋ねるとうなずきながら「主人が余りにも私のバストのことを美乳だといってほめるものですから、つい本当のことを言ってしまいました。」とのことでした。
「いつまでもお幸せに。。。。。」と言って、お二人を見送りました。
今回の患者さんは23歳の女性で、痩身のご相談に来院されました。中学・高校とバレーボールをされていましたが、やめてから徐々に体重が増加してきたとのことで、18歳の頃47kgだった体重は現在58kgになってしまったそうです。
「増えた皮下脂肪の殆どが脚に付いちゃったみたいで、可愛いミニやショートパンツがはけないんです」とのこと。診察と同時に超音波検査を行なったところ、スポーツをされていたためか大腿部・下腿部はかなりの筋肉量で、その上に体重増加による皮下脂肪がついていて、きゃしゃな上半身に比べてかなりの下半身肥満の状態になっていました。お話では色々なダイエット法やエクササイズ器具などを購入して試されたそうですが、すぐにリバウンドしたり、一番細くなりたい大腿部・下腿部に殆ど効果がなかったとのことでした。
現在の痩身術にはカーボメッドやメソセラピーなど炭酸ガスや特殊な薬剤を皮下脂肪層に注入して、脂肪を分解代謝する方法もありますが、この患者さんはカウンセリングの結果、効果が最も確実な脂肪吸引法に決定しました。これはよく知られているように、カニューレという細い吸引管で皮下脂肪を吸引する方法ですが、技術と経験に加えて、皮下で行う彫刻にも例えられるくらいに、美容外科分野では美的センスが最も必要とされる手術です。
さて患者さんの脂肪吸引の手術日がやって来ました。当日の朝、偶然に患者さんとエレベーターで一緒になりましたが、「昨夜は緊張してよく眠れませんでした。」とのこと。しかし睡眠不足のためか却って手術中は緊張がほぐれたようです。
術前にもう一度簡単に手術の説明をした後、身体にデザインを描くのですが、私のデザインは先ず脂肪吸引部を詳細に観察して脂肪の厚さやその下の筋肉を確認して、体表に綿密な等高線を描いて行きます。前回もお話しましたが、脂肪吸引とは人の身体の彫刻そのもので、技術と経験はもちろん美的センスが最も要求される芸術のようなものです。一般に大腿部で最も脂肪が目立つ部位は、脚の付け根の内側上部と外側上部及び膝の内側です。麻酔は硬膜外麻酔法で術部のみ無痛にするため途中で経過を見ることも可能です。現在は直径2mm以下の細いものから太いものまで様々な種類の吸引管を用いて、脂肪層の深層から浅層まで非常に細かく丁寧に吸引して行うために術後の凹凸も殆どありません。
「どうしても可愛いミニやショートパンツをはきたいんです!」というこの女性の夢を叶えるために、途中で何度も色々な方向から彫刻(?)の形を確認し吸引管の入っている深さを確かめながら3時間の手術に神経を集中しつつも、患者さんと色々なお話をしながらの楽しいひと時でした。
脂肪吸引は彫刻のマラソンのようなもので、患者さんから4kgの脂肪を吸引すると主治医は2kgくらい痩せますが、1ヵ月後の検診にこの患者さんが可愛いショートパンツで嬉しそうに来られて、「せんせい、本当にありがとうございましたぁ」というお礼の言葉で、3時間マラソンの疲れも吹っ飛んで報われた気分になりました。
美しくて豊かなバストはいつの時代も洋の東西を問わず女性ばかりでなく男性にとっても憧れの的です。私が美容医療の世界に長年いて感じるのは、女性のバストに対する強い「憧れ」と「こだわり」です。最近の女性の目覚しい美意識の向上と美容医療への関心が益々その傾向を強めているようです。人にはそれぞれ色々な悩みがあるものですが、女性のバストに対する思いは男性からは到底想像も出来ないくらいに強いものがあることを改めて感じたお話です。
42歳の女性がバストのご相談で当院に来院されましたが、外見は大変に若々しくて美容外科医の私の目から見ても30歳位にしか見えません。ところがお話は「20代の頃は大きさも形もキレイで張りもあったのに、2人の子供を出産して授乳をしたら垂れて小さくなってしまって今は見るも無残でとても悲しいです。」とすっかり自信をなくされている様子でした。
本当は、垂れて小さくなったバストは2人のお子さんを育てて来られた母親の証であり誇るべきものです。文学の世界でも「たらちねの(垂れ乳の)」は「母」を表す枕詞です。私はいつも患者さんのご相談やお話を徹底的に聞くことにしていますので、この方もカウンセリングがかなり長引いてスタッフが時間を心配していましたが、詳しく聞いてみると原因はご主人の浮気にあったようです。この女性は、ご主人の浮気の原因が自分のバストにあると結論された訳です。その希望はバストを以前のような若々しく張りのある状態に戻すということです。まさに”Mission imposible”です。
現在の状態は、元々大きかった乳腺と乳腺脂肪が授乳後に縮小したため伸びた皮膚や周辺組織とのアンバランスが原因のため、手術は過剰になった皮膚を切除しながらバストの中身を人工乳腺(バッグ)で増大する方法でマストペクシー(バストリフトアップ術)と豊胸術を同時に行うことに決定しました。
ご主人の浮気が原因でバストの手術を決心された42歳の女性は、マストペクシー(バストリフトアップ術)と豊胸術を同時に行うことになりました。女性のバストは乳腺と乳腺脂肪で構成されており、授乳時一旦大きくなった後は年令とともに小さくなって垂れ下がってしまいます。今回の手術では、先ず伸びてしまった皮膚を切除すると同時にその傷痕を利用して豊胸術バッグを入れる方法です。マストペクシーや乳房縮小術には数多くの方法がありますが、余剰の皮膚を切除しつつ自然で美しいバストの形を作るのは中々難しく、同時に豊胸術を行うために術後の血行障害や傷痕など高い技術と長い経験が必要な手術の一つです。
特にこの方の術前のデザインには長い時間をかけました。切除する皮膚の量と位置で乳頭乳輪のリフトアップの位置やバスト全体の形が決まるからです。豊胸術には最新のコヒーシブシリコン(外膜が破れても漏れない凝集性シリコン)のスーパーアナトミカルタイプを用いました。手術は先ず控えめに皮膚を切除して、乳腺の下にスペースを作成してバッグを入れ、バスト全体のバランスを見ながら少しずつ修正していくという細かい方法です。
長い時間の手術でしたが、無事終了し麻酔から覚めた時に患者さんが言われた「きれいな胸になった?」という言葉は今でも私の耳に残っています。今回の手術ではバストに対する「こだわり」と「思い」を強く感じました。結果は期待に応えることが出来たようで、検診時には表情まで自信に溢れて輝いて見えました。確かに美しいバストは輝く女性を作りますが、ご主人の浮気がその後どうなったのかは分かりません。
今回の方は26歳の女性で小顔の相談で来院されました。カウンセリングでは「身長の割りに顔が大きく骨ばって見えるので、卵形のソフトな感じの小顔にしたい」というご希望で、当時有名なJJのモデルの写真を持参されました。モデルの女性は典型的な流行の小顔でハーフっぽい印象ですが、プロの私の目から見ると美容外科手術で色々と修正されているのが分かりました。
一方患者さんの顔は、頬骨が大きく前方と側方へ張っている上に、エラ骨(下顎角)も大きく咬筋も肥大しています。顔面骨は出っ張っていると顔が大きく見えてきつい印象になるばかりでなく、頬やコメカミは逆にこけて見えてしまいます。顔面骨のX線を見ながら患者さんの希望を聞いて手術の方法と限界などを詳しく説明し、手術としては頬骨縮小術(頬骨削り)と下顎角縮小術(エラ削り)に決定しました。
この手術は口腔内からのアプローチのために傷痕は外からは見えませんが、狭い視野で特別な器具を用いて行うために、熟練した技術と長い経験が必要です。特にこの患者さんは、縮小量を大きくするために頬骨は1cmほど切除し内方へ移動する方法と、下顎角は広範囲に角部を切除した後に外板を切除する術式を行いました。手術は全身麻酔で5時間近い手術でしたが、結果は非常に良好で、あれ程大きく骨張った顔が、1ヶ月後にはJJモデル並みにソフトな輪郭の小顔になっていました。
結果に大満足されたためか、その後この患者さんはバストアップの豊胸術、脂肪吸引術も受けられました。現在はモデルとして頑張っておられるようです。その方から頂いたお礼のメールの中に「先生は私の創造主です。」という言葉が気に入って今も大切にパソコンの中に保存しています。